#20 吃音者のはじめての留学 その3
週末になると、ファミリーとお出かけに行く。
そのホストファミリーの宗教関係上、週に一回教会に行く。私も行かなければならなかった。
30人ほどが集まり、神父の話を聞き、歌う。
話さなければならない環境以外、私にとってはなんてことはない。何時間話を聞こうが平気だった。しかし嫌な予感がしてたまらなかった。
最後、もう帰れると思ったその時、神父が私に向かって言った。「教会へいらっしゃい」
私は「thank you」と答えた。これで終わってくれ、と願ったのも束の間、私に話が振られた。
嫌な予感が的中した。
どこから来たの?どこの宗教を信じてる?30人もの人の前で質問攻めにされた。
英語が話せないから嫌なわけじゃない。吃音がバレるから嫌だった。
もし私が非吃音者なら、人の前で話すことに抵抗はない。むしろ、話すことが好きなので本当の自分で居られる。
オーストラリアの吃音に対する理解の具合はわからなかった。だからこそ怖くて言えなかった。
少なくとも日本よりかは理解があると思う。
当時、将来はオーストラリアに住みたいと思った。