#17 吃音者のはじめての留学 その1
私は高校時代、オーストラリアに短期留学した。
動機は、海外に興味があったことと、日本語から離れることができること。その世界を体験したかった。
あ行が苦手な私にとって、ありがとうをthank youと言える英語圏はとても居心地がよかった。
私は当時英語が全くわからなかった。中学校で習う単語しか知らず、吃音関係なく話せなかった。
ホームステイなので、バディの子と生活をする。
私のバディの子はトム。とてもイケメンな青年で、学校内でも人気者だった。
彼は日本に興味があり、日本語を勉強していた。
滞在中、お互いに母国の言葉を教え合っていた。
初日、トムが日本語で会話してみたいと言った。
吃音症のことを知らない彼は、私が日本語を流暢に話すと思っていたのだ。
いざ会話してみると、私は沈黙せざるを得なかった。私の独特な言い回し(自分の言いやすい言い方)で言うと、彼はそれを覚えて変な日本語になってしまうからだ。
彼は不思議そうな顔をするが、『日本語は日本人でさえ難しいと感じる』という知識を持っていたため、なんとか誤魔化せた。
私は倒置法を多用する。言いやすい言い方に変えるためだ。(後日詳しく書く)
英語で話すとなると、英語が難しく、話せないふりをすれば吃音は隠せる。そう思い、滞在中は英語でしか話さないと決めた。