#9 初めて私と同じ吃音者と出会った日
20年間、吃音の問題を1人で抱え込んできた。
相談できる相手は2、3人ほど、それでも完全には理解してもらうことは難しい。
そんなある日、カリフォルニア出身の外国人の先生と出会った。
彼はスピーチの仕事もしていて、人の前で話すことが好きなんだそうだ。
吃音者なのに。
今まで見たことがなかった。吃音で悩んでいるにもかかわらず、人の前で話すことが好きな人を。
私は自分の視野の狭さにショックを受けた。
吃音者は全員、人前で話すことを嫌うものだと思っていた。
私たちにとって、自己紹介、プレゼンテーション、ディスカッション、そういった類の話す機会は出来れば避けたいと考えると思う。
彼は違った。話すことを仕事にし、日常的に人と話す。とても楽しそうだった。
私は彼と出会い、考え方が変わった。
吃ったから何だ。時間がかかったから何だ。
これが私たちの話し方であり、誰にも指摘される筋合いはない。話したいことを瞬時に話せることが偉いわけでもない。
最後に彼の言葉を使わせて欲しい。ぜひ皆にも知っていて欲しい。
私たちを理解しようとしない人に、価値はない。
安心して。私たちが吃ることによってコミュニケーションが取りにくいと言う人は、元からコミュニケーション力に欠けている。心配することはない。
私たちほど、人と話すために頭を使い、試行錯誤している人種は他にいない。
私たちは恵まれていなかったのかもしれないが、他の人には悩めない悩み方をできる。
そこから私たちにしかわからない考え方、発想、お互いを大事に思う力、言葉ではわからない情報の受け取り方を学べる。決して人生を諦めず、何が起こるかわからない毎日を楽しんでいこう。